2007年10月21日日曜日

MSU医学生の教育場面

本日は久々の投稿です。
こちらに来て、いよいよ1ヶ月になろうとしています。今日は今までに体験した、アカデミックな部分を書いてみようと思います。

まず、大学の医学部(College of Human Medicine)の概要ですが、医学生は各学年100人で4年制の大学です。MSUには病院がないため、病院実習をする3年生と4年生はMSUの周囲の関連病院に散っているようです。ちなみにレジデントも大学のクリニックで働いている人はほとんどみかけません。
こちらに来て今までに見学した内容はいくつかの医学生向けの授業の見学、Oral examinationの見学です。

医学生向けの授業:
特に興味のある次のような分野を見学しました。さまざまなシナリオを利用したProblem Based Learningと、Bio ethicの授業、Simulation形式のInteraction Skillの授業。
全て6.7人くらいの小グループ単位での授業でした。

<Problem based learning>シナリオを書いた紙が配布されて、そのケースを使って、主訴、現病歴、身体所見からプロブレムを抽出して、それについてそれぞれ鑑別を考え、アセスメント、プランを立てていくものです。何かその場で解決しない問題が出たり、あらたなテーマの問題に行き着いたら、宿題となってその次の授業で再検討するといった流れになっているようでした。だいたい7人ぐらいの小グループ単位でローテーションしているみたいです。PBLは最近は日本の大学でも取り入れられているのでしょうか?少なくとも僕の受けたときの授業とはまったく違っていました。日本の大学の大学のPBLとは違いがあるのでしょうか?

<Simulation形式のInteraction Skillの授業>模擬患者に問診したものをビデオテープに撮ってそれをプリセプターがいくつかの採点基準に沿って採点し、同時に小グループでもディスカッションをしていました。また、模擬患者さんにも採点用紙が配布されていて、問診の施行者が患者さんからもfeed backを受けるようになっていました。こちらでも、Open Ended Questionから始めて徐々にClosedな質問をする、とか、患者さんがComfortableに見えるか、とか、共感の姿勢を示しているかということがポイントとなっていました。この授業の対象は1年生だったので、まだsexual historyのとりかたや、ethical な問題、substance abuseについてなどは訓練を受けていないとのことでした。こちらで特徴的と思われる問診内容に「medical insuranceを持っているか?」という質問があったのには、国の違いを感じました。ビデオを使った指導は日本でもいくつかのレジデンシーで行っているかと思われますが、こんなに自分の授業を大人数で検討するところはあまりないと思います。日本人の感覚だと、人数が多いとそれだけ恥ずかしいのでは、というふうに思いました。

<Oral Examination>
family practice department主催の医学部2年生を対象にした試験です。おそらくclinical clerkshipの前のオスキーみたいなもんだと思いますが、なんせたいそう大掛かりな設備が準備されていて金のかかったものになっているのに驚きました。








(以下、私の日記より)
今回の試験はFee hallに新しく改装されたLAC(Learning Assessment Center)を使っての初めてのこころみだそうだ。Simulation形式による問診と簡単な身体所見、さらに鑑別診断、アセスメント/プランの構築までをを全てoralのみで問う試験であった。身体所見といっても、実際に診察してするわけではなく、たとえば膝痛の患者さんなら、どのような手技を用いてどこをみるか、みたいのを口頭で検査官相手にいったり、バイタルは?と聞いたり、咽頭所見、概観所見、呼吸音、心音などは聞けば試験管が設定されたシナリオどおりに答えるというもの。また、簡単な検尿などの検査所見、膣液検査なども聞けば検査官が答える、という形式であった。しかし、短時間で、かなりくまなく網羅した問診、身体所見、そしてそれをプロブレムとして整理して、鑑別をあげてさらなる検査プラン、治療方針までまとめあげるというのは学生にはかなり困難と思われ、案の定全てを完璧にこなす学生はいなかったように思われた。
 本日の試験は、まずとても大掛かりなものでかなりよく練られたものだといえるだろう。それよりもまずは真新しい教室の中のセッティングの機器のすごさに圧倒された。試験で使われた部屋は4つであるが、おそらくかなりの数の部屋があると思われる。そして、各部屋には診察台とテーブルと、コンピュータが配置されており、それをビデオカメラで撮影できるようになっており、それがコンピュータルームに届いてそれを見ることができる、というもの。僕は試験の間ずっとそのコンピュータルームで各部屋の様子をみていた。部屋の中には、NICUや病棟でのCPAかなんかを想定して治療ができるようにベッドに蘇生用の人形(ベビーと大人)がおかれたりもしていた。
試験自体は朝8時からオリエンテーションが始まり、8時半から試験開始。各学生は2ケースずつ試験を受ける。それが午前中から2時ころまで間のbreakをはさんで永遠に繰り返される。総勢100人?200人?いるらしいので全てやり終えるのにそれだけの時間を要するのだろう。途中で帰ったので何時まで続いたのかの詳細はわからない。
詳細にシナリオについて触れると、まずあたえられた時間は20分。シナリオは、おおきく2種類に分けられて、学生はそれらを1つづつ受ける設定。1つは特に症状のない患者を対象にヘルスメンテナンスをする能力を問い、別の方は実際に症状を有する患者さんに対して詳細な問診・身体所見をとり、それに対してアセスメント、プランを立てるという形式。
ヘルスメンテナンスの方は、2つの部屋で行われ、それぞれにおそらくCHMのスタッフの人が模擬患者となってそれぞれにつく。それを部屋の外からビデオを見ながら別のスタッフの先生が採点し、試験終了後に患者役の試験管とすり合わせてダブルチェックするようになっていた。
ヘルスメンテナンスのシナリオはひとつは50台の女性で、定期健診に訪れたもの。しかし4ヶ月ほどの前に夫以外の職場の男性と関係を持ってしまったとのこと。一通りの検査を終えて結果を聞くという設定。もうひとつは、もともと高血圧のある50台の男性が、長いこと診察を受けていないので妻にあとを押されて受診したというもの。ポイントはどちらのシナリオも先ほども述べたように、ヘルスメンテナンスの必要な情報を提供する。具体的にはがん検診をすすめたりするのがメインと思われる。
別の疾患グループのシナリオの4つありそれを2つずつ2つの部屋で行われた(学生はそのうちの1つを受ける。)内容は以下のとおり。

1:膝痛できた14歳の女性。チェックポイントにあがっている問診内容と身体所見の項目を聞くとポイントが加えられていく。膝の所見のとり方はかなりいろいろな検査手技がチェックポイントにあがっていたのでけっこうしっかり勉強していないと全てはこたえられないと思った。おまけの写真で、体感の白癬のようなものが提示され、皮膚所見の性格の供述と鑑別があげられるかがポイントとなっていた。
2:20歳の女性。主訴は忘れた。
 おまけの写真では手の水包か膿包が移っており、皮膚所見の正確な供述と鑑別をあげられるかが問われていた。
3:血尿を主訴に訪れた50台の男性。鑑別に癌やUTI,結石などがあがるかが問題となる。尿検査所見のコピーで赤血球円柱があり、おそらくNSAIDSによる腎炎が答え。
4:無月経を主訴に訪れた52歳の女性。本人はmenopausalじゃないかと思っている。
 問診で、sexual historyをとると4ヶ月ほど前に夫以外の職場の男性と関係を持ったとのこと。menoposalの症状の有無をしっかり聞けるか、ホルモンなどの検査などの項目がいえるかなどもチェックポイントに挙がっていた。おまけで、膣のwet mountのコピーで、真菌が答えられるかと適切な治療も聞かれていた。

 Family medicineの中でも問診でコアとなる部分でもあるsocial history, sexual history, substance abuse, health maintenanceなどの問診のとり方について、しっかり臨床に出る前にトレーニングを受けている点はやはり学生といえども日本のレジデントレベルだろう。
ここまで、お金をかけた完璧な設備投資は民間のレジデンシーレベルでは無理だと思うが、中身的には参考にできる部分は多いと思われた。
以上、資料は門外不出になっていたので覚書程度にメモしたもの。

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