2008年1月8日火曜日

Osteopathic Medicine 外来見学

1/4,7/2008
Dr. Randy DeArmentについて2日間の外来見学をした。
Dr.DeArmentは、私が11月にプレゼンテーションしたときに聴きにきてくれたD.Oのドクターで、そのときにOsteopathic medicineの外来見学をしてくれてもいいといってくれていた方である。今回、改めて外来見学をお願いしたところ、こころよく引き受けてくれたため、実現した。
彼の外来はClinical Centerの2階にあるFamily Practiceのdepartmentで行われていた。
Clinical Centerには、M.DによるFamily PraciticeとD.Oによるそれが存在している。
診察室の装備や、電子カルテを用いた診療システムは基本的には同じようである。












DeArment医師によれば、MSU-COM(College of Osteopathic Medicine)の教育では、genreralなD.Oを育成することを目標としているが、最近のはやりとしては、D.Oに関しても専門志向がブームのようで、手術やマタニティケア、スポーツ医学などの専門領域を持とうとする医師が増えているとのことであった。
ちなみにD.Oの母体学会、AOAは現在18のsubspecialityのための認可学会を持っているとのこと。詳しくはこちら:
http://www.osteopathic.org/index.cfm
https://www.do-online.org/index.cfm?PageID=edu_main&au=D&SubPageID=crt_main

Osteopathic Medicineの哲学については以前のべたが、患者を全人的に見るということに関してはM.DのFamily Medicineと全く同じである。ただし、アプローチの方法が、患者の体に触れて診察することの重要性をより大切にしており、特にOsteopathic Manuplate Therapy/Medicine (OMM or OMT)という手技により筋骨格系の異常を指摘することから体全身の問題にアプローチし、その異常を矯正しながら全体の問題を解決するという手法によって特徴付けられるかもしれない。

<Dr.DeArment外来>
患者数、患者層については、今まで見学したほぼM.Dの家庭医のスタッフのものと同じである。なんらかの筋骨格系の問題を抱えている人が多い印象もあるが、精神疾患のフォローに来る人、血圧のフォローに来る人、また、世代を超えてかかっている人もいた。Dr.DeArmentは婦人科の患者は以前は見ていたが、現在は診ていないとのことであった。
診察内容については、受診の動機に対してのアプローチやHealth Mentenanceの指導、家族歴を念入りに聴取して、患者のコンテクストを把握しようとする姿勢などはM.Dのそれと全く同じであった。
Dr.DeArmentは特に肥満に対する指導に熱心で、かなりの時間を割いて、指導していた。ユニークだったのが、個人もちの日本でもお馴染の体脂肪計を用いて、それを患者に実際に計測させ、得られた体脂肪率からleanの体重を計算して、どれだけの脂肪を落とすべきかを患者と協議しながら現実的かつ具体的な方法を指導していた。
今回印象深かったケースがある。ペニスのしこりに関して来院したおそらくBMI50くらいもあろうかという巨体の患者さんがおられ、その患者の問題部分の診察を終えた後、同じような指導をしようとしたところ、彼は自分の肥満を話題にされることに対して明らかに不快な感情を表出しており、「今まで何度もダイエットに挑戦したが全て失敗に終わった。何をやっても成功する気がしない」と諦めている患者さんに対してもひるむことなく熱心に指導していた。診察のあとで「泌尿器の疾患に対して話するだけなら簡単だ。我々はプライマリケア医としての自覚があり、責任がある」と語る彼の姿勢にプロ意識の高さを感じ、とても感激した。自分が日本で診療していたときは同じような状況では容易にひるんで、問題に向き合うことから患者と一緒に逃げてしまっていたかもしれない。でも、それは患者のためにはよくないことなのである。

それ以外にD.Oに特徴的な診察として、OMMを施行する、しないにかかわらず、全ての人を靴下を脱いで立たせて、足の土踏まずのところのアーチを評価し、骨盤の左右の高さをみたり、脊椎のゆがみを見、横に寝かせて足の左右の長さの差、仙骨のゆがみなどをほぼルーチンに見ていた。そして得られた所見から靴のインソールの挿入をすすめたりなどの患者背景に合わせた具体的な生活指導をしていた。
OMMについては、実際に私も施行してもらったが、カイロプラクティスに似た手法で、首や腰、背中の間接を「グキッ」と鳴らしたり、ROMというそうだが、関節の可動範囲をひろげるような手技や、手のひらを使った指圧のようなことをしたりしていた。

<OMM外来>
見学2日目の午後からは、Family Medicineのdepartmentの隣にあるOMMのdepartmentでの診察を見学することができた。これは、Dr.DeArmentが私のOMMに対する興味を汲み取ってくれて、OMMのdepartmentの医師に私を紹介してくれたため実現した。
OMM外来は、名前の通りOMMに特化した外来で、一人の患者に対して20分くらいの枠でOMMを施行していた。
あとで知ったことであるが、D.OによるDepartmentは家庭医医療科のほかにもOMMを含めていくつかの科をもっているようである。
http://www.com.msu.edu/dept/index.html
ここでは、Dr.Guegelについて指導をいただいた。たまたま、見学したときに、COMの学生がフェローとしてきていたのだが、最初に彼女が患者さんに対して、全身の評価をし、その評価をもとにDr.Guegelが実際に診察するという形式であった。
Dr.DeArmentのOMMと基本的にはそれほど変わらないと思うが、Dr.Guegelのそれはより症状のある部分への治療に時間をさかれていた。
主義的にはマッサージや、ROMなどが主に見えた。
学生が実際に患者さんにOMMを行っている学生用のクリニックがあるため、フェローの学生にお願いして今度見学にいかせてもらう約束をすることができた。

<まとめ>
今回、たぶん今までのinternational scholarの中でも初めてと思われるD.Oの医師による家庭医療外来を見学することができた。M.Dのする家庭医療とD.Oのそれとは、守備範囲としてはほぼ同じであるが、疾患アプローチと治療手技の点で違う部分もあり、それを知ることができたのは大変有意義な経験であった。
また、COMの医学生のクリニックを見学する機会も得ることができたため、これを機会にもう少しD.Oに対する理解を深めてみたいとおもう。

1 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

私が実現できなかったことです。家庭医のプログラムには比較的D.O.が多いのに、日本ではあまりD.O.の家庭医と関連を持ちません。日本にもOsteopathicの団体があるようですが、日本ではM.D.でないと医師としては働けませんので、あまり関連を持ちません。個人開業医の家庭医やD.O.の家庭医についてのレポートは、なかなか聞く機会がありませんが、そこから学べることもあるでしょう。岡田先生のブログでも紹介されていたように、アメリカで見学して学んだことを、帰国後いかに生かしていくかの計画は、帰国前に行う必要があります。何か御提案があればご紹介ください。